2021年度第2回 パレスチナ/イスラエル研究会 報告

◾️田浪亜央江(広島市立大学・准教授)「パレスチナのパフォーミングアートと〈越境〉:西岸のダブケと48年アラブの劇団を中心に」

 

 田浪亜央江氏の報告は、パフォーミングアートが日常に根差した文化から、シオニズムに対する越境する対抗言説へと変化していったことについて議論するものだった。

 タブケが1960年代からパレスチナの文化として復興/発明されていくなかで、タブケのフォークロア収集、そして新しいタブケ作品の創出といった歴史的変遷が示された。「エル・フヌーン」の活動の紹介を通じ、タブケがディアスポラ・パレスチナ人とのつながりを作り出すこと、また「時間内時間」概念のハレの日を創出することによる現状の占領を仮の時間とすることといった機能が指摘された。同様に、イスラエル領内の演劇劇場での48年アラブの活動を紹介することで、パフォーミングアートが果たすさらなる可能性を示唆した。 質疑応答では作品のオーディエンスに関する質問や、政治性を避けることの意味、「時間」概念が他のパフォーミングアート全体に適用できるのか、タブケのナショナルな属性がパレスチナ外に広がる余地があるのか、またアートと「空間」の関係についての質問など非常に活発な議論がなされた。

文責:澤口右樹(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻・博士後期課程)