2017年度第 4回 パレスチナ/イスラエル研究会(国際ワークショップ “Health and Peace of Palestinians”) 報告

■リタ・ジアカマン[Rita Giacaman]
(ビルゼイト大学、パレスチナ[Birzeit University, Palestine])
“Political Determination of Health -A case of Palestinians‐”

パレスチナ・ヨルダン川西岸地区のビルゼイト大学地域保健・公衆衛生研究所の創設者にして所長である同氏の報告は、以下のようなものであった。ジアカマン氏はまず病、Diseaseとは、Die-Easeなのだと説明し、Ease、即ち安らぎがない状態こそが病なのであることを強調し、私たちは身体上の症状を超えて病を定義するべきであると主張した。さらにことパレスチナ(歴史的パレスチナのうちヨルダン川西岸地区とガザ地区)においては長期にわたる軍事占領というファクターなしには、保健医療に対する如何なる分析もなしえないことが説明された。またこれに際し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で学んでいた氏は、第三次中東戦争後のヨルダン川西岸地区の状況を見て、アメリカに残らずに帰国することを選んだことを述べた。寄生虫学や薬理学を学んで帰国した氏は、コミュニティー・ヘルスワーク・プログラムを帰国後早速開始した。そしてヨルダン渓谷で、占領と入植活動も関連している、水汚染による下痢の頻発(特に児童)を目の当たりにし、英エセックス大学で社会学の観点から西岸地区の保健衛生の状況を研究し、修士号を取った。氏は、国連が定めたMDG、SDGは既におおむね達成されている、しかしイスラエルを前にしたパレスチナにおいてはJustice Firstでなければ何も解決しないことを訴えた。またイスラエル占領下で繰り広げられているのは、生政治Bio-PoliticsならぬNecro-Politicsであると述べた。

文責:鈴木隆洋(同志社大学グローバルスタディーズ研究科・博士後期課程)